クリック前の検索結果やSNS投稿から透明な入口へ信頼が積み上がる様子を表したアイキャッチ

現在のSNSに最適化した「ゼロクリックマーケティング」

公開日: 2026/06/03更新日: 2026/06/07カテゴリ: マーケティング著者: 服部 雄治朗

SNSやSEOのマーケティングでは長い間、「投稿や検索結果から自社サイトへ誘導すること」が重視されてきました。 具体的には投稿にURLを貼り、SNSの外にある自社サイトなどへの誘導を優先した投稿です。

もちろん、サイト訪問や問い合わせは今でも重要ですが、今のユーザー行動やプラットフォームの設計を見ると、 最初からクリックを求めるだけのマーケティングは成果につながりにくくなっていると考えた方が自然です。

そこで注目されているのが、ゼロクリックマーケティングです。

ゼロクリックマーケティングとは、簡単に言えば、ユーザーにクリックを求めて外部のサイトなどで価値を届けるのはなく、 その場のSNSの投稿などで価値を届け、まずは信頼をつくるマーケティングです。

気になる概要のみをSNSに投稿するのではなく、SNSに具体的な詳細まで書くイメージです。

目次

ゼロクリックマーケティングを言語化した人たち

ゼロクリックマーケティングは、Amanda Natividad と Rand Fishkin が2022年頃から言語化・普及させてきた考え方です。公式サイトでも、Zero Click Marketing は Amanda Natividad と Rand Fishkin によって2022年から “coined and popularized” されたものとして紹介されています。サイト訪問の前に価値を生む、新しいブランド構築の考え方として位置づけられています。(zeroclickmarketing.co)

Amanda Natividad は、Zero Click Marketing という企業の創業者であり、SparkToro のチーフエヴァンジェリストでもあります。B2C、B2B、SaaS、代理店など複数領域でマーケティングを経験してきた人物で、ゼロクリックコンテンツやプラットフォームネイティブな発信の考え方を広めた代表的なマーケターです。(zeroclickmarketing.co)

一方の Rand Fishkin は、SEOツール企業 Moz の元CEO/共同創業者であり、現在は SparkToro の共同創業者です。SEOや検索行動の変化を長年データで分析してきた人物で、ゼロクリック検索の文脈では特に知られています。(sparktoro.com)

なぜ今、ゼロクリックマーケティングなのか

背景には、検索、SNS、AIのすべてが「外部サイトへ移動させる」よりも、「その場で情報を完結させる」方向に進んでいることがあります。

検索では、AI要約の登場によって、ユーザーが検索結果から外部サイトへ移動しないケースが増えています。Pew Research Center の2025年調査では、Google検索結果にAI要約が表示された場合、通常の検索結果リンクをクリックした割合は8%。AI要約がない場合の15%より低い結果でした。また、AI要約内に引用されたリンクがクリックされたのは1%にとどまっています。(Pew Research Center)

Google自身も、AI Mode を「より高度な推論、マルチモーダル、フォローアップ質問を備えたAI検索体験」として展開しています。従来の検索結果一覧から、AIが回答をまとめ、必要に応じてリンクを提示する体験へと検索の形が変わりつつあります。(blog.google)

コンサルティングファームのBain & Companyも、AI検索や生成AI要約によって、ユーザーが検索結果ページ上で答えを得る行動が広がり、オーガニック流入が15〜25%減少していると分析しています。(Bain)

ただし、「AI要約が出るから必ずクリックが減る」と単純化するのは危険です。Semrush の調査では、AI Overviews が出るキーワードはゼロクリック率が高い傾向にある一方、同一キーワードの前後比較では、AI Overviews の出現後にゼロクリック率が必ず上がるとは限らないという結果も示されています。つまり重要なのは、AIを敵視することではなく、ユーザーがクリック前に情報を得る環境になっているという前提でマーケティングを設計することです。(Semrush)

SNSでも「投稿内で完結する価値」が強くなっている

ゼロクリックの考え方は、検索だけでなくSNSでも重要です。

Amanda Natividad は、ゼロクリックマーケティングを説明する中で algorithmic capital、つまり「アルゴリズム資本」という考え方を使っています。リンクなしで単体の価値がある投稿、カルーセル、ネイティブ動画、気づきを与える投稿は、アルゴリズムへの預金になる。その蓄積によってエンゲージメントやリーチが高まり、ユーザーとプラットフォーム双方からの信頼が積み上がる。そのうえで、たまにニュースレター登録、デモ予約、資料ダウンロードなどのCTAを出す、という考え方です。(LinkedIn)

Hootsuite も、LinkedInではテキスト投稿、カルーセル、動画などのネイティブコンテンツが外部リンク付き投稿より優先されやすい傾向があり、滞在時間、専門性、意味のあるコメント、関連性などが投稿の評価に影響すると解説しています。(ソーシャルメディア管理ダッシュボード)

つまりSNSでは、いきなり外へ連れ出す投稿よりも、まずその場で価値を届ける投稿を行い「役に立った」「この会社の信頼できそう」という印象を与えることが重要となり、問い合わせなどにもつながります。

「ゼロクリック」はクリックを全くさせないわけではない

ここで誤解してはいけないのは、ゼロクリックマーケティングは「クリックをなくす施策」ではないということです。

むしろ逆で、

  • クリックしてもらう前に、信頼をしてもらう
  • 問い合わせしてもらう前に、理解してもらう
  • 資料請求してもらう前に、思い出してもらう

そのための施策です。

Informa TechTarget は、ゼロクリックマーケティングを「オーディエンスが見つけたその場所で、価値ある完全なコンテンツを届けること」と説明しています。目的は単なるサイト流入ではなく、リーチ、エンゲージメント、インパクトを最大化することです。(Informa TechTarget)

Content Marketing Institute も、ゼロクリック検索時代のSEOでは、検索結果上で答えとして表示されるための戦略と、クリックを獲得するための戦略を分けて考える必要があると説明しています。ブランド認知や専門性の訴求が目的なら、ゼロクリックでの可視性にも意味がある。一方で、深い情報を求めるユーザーにはクリックされる設計も必要です。(Content Marketing Institute)

つまり、ゼロクリックマーケティングは「URLを貼らないこと」ではありません。大事なのは信頼してもらってからURLを貼るという順番を守ることです。

BtoBでは特に重要になる

BtoBでは、ゼロクリックマーケティングの重要性がさらに高くなります。

理由は、多くの見込み客が「今すぐ買う状態」ではないからです。LinkedIn B2B Institute の「95-5ルール」では、潜在顧客の95%は今すぐ購買する状態ではなく、将来どこかのタイミングで購買検討に入る層だと説明されています。(LinkedIn)

さらに、Gartner の2025年調査では、BtoBバイヤーの61%が営業担当者を介さない購買体験を好み、多くの買い手がデジタルチャネルで独自に調査することを望んでいるとされています。(ガートナー)

Forrester も、BtoB購買では平均13人が意思決定に関与し、89%の購買で2部門以上が関わると報告しています。つまり、BtoBの購買は単純な「投稿を見た → クリックした → すぐ問い合わせた」という流れではなく、複数人が時間をかけて情報収集し、比較し、合意形成するプロセスです。(Forrester)

この環境では、毎回「資料請求はこちら」と誘導しても、多くの人は行動しません。

毎回誘導するよりも、今すぐ買わない人たちに対して、

  • このテーマならこの会社
  • この課題ならこの人
  • この領域ならこのブランド

と思い出してもらうことが重要です。

ゼロクリック投稿は、そのための接点になります。

ゼロクリックマーケティングでやるべきこと

ゼロクリックマーケティングでやるべきことはシンプルで、投稿内で価値を完結させることです。

たとえば、次のような投稿です。

  • よくある失敗を3つに整理する。
  • 導入前のチェックリストを出す。
  • 専門用語を図解で説明する。
  • Before / Afterで変化を見せる。
  • 顧客が勘違いしやすいポイントを解説する。
  • 現場で得た気づきを短くまとめる。
  • 1枚の図で考え方を伝える。
  • 短い動画でノウハウを完結させる。

こうした投稿は、リンクをクリックしなくても価値が伝わります。

もちろん、すべての情報を無料で出し切る必要はありません。 ただし、投稿を見た人が「読んでよかった」「保存しておきたい」「この人をフォローしておこう」と思えるだけの価値は、その場で渡す必要があります。

Google Search Central も、AI Overviews や AI Mode に表示されるための特別な最適化は必要なく、基本的なSEOベストプラクティスが引き続き重要だと説明しています。これはSNSにも通じます。結局のところ、重要なのは小手先のアルゴリズム対策ではなく、ユーザーにとって役立つ、明確で信頼できるコンテンツを作ることです。(Google for Developers)

測定指標も変える必要がある

ゼロクリックマーケティングでは、クリック数だけを見ていると効果を見誤ります。

なぜなら、価値の多くはクリック前に発生しているからです。

見るべき指標は、たとえば次のようなものです。

  • インプレッション
  • 保存数
  • コメント数
  • シェア数
  • フォロワー増加
  • プロフィールアクセス
  • 指名検索
  • ブランド名検索
  • DMや問い合わせ時の「どこで知ったか」
  • 営業現場での「投稿を見ています」という声
  • AI回答や比較記事、コミュニティ内でのブランド言及

SEOコンサルタントの Aleyda Solis も、AI検索では成功指標がクリックだけではなく、AI回答に含まれることやブランド可視性も重要になると整理しています。従来の「検索順位1位」だけでなく、AIが参照する数少ない情報源に入れるかどうかが重要になるという見方です。(aleydasolis.com)

つまり、ゼロクリックマーケティングでは、直接CVだけでなく、信頼形成・想起・会話・指名検索・AI可視性への貢献を見る必要があります。

まとめ

ゼロクリックマーケティングとは、クリックをなくすことではありません。

クリックされる前に、価値を届けること。 誘導する前に、信頼をつくること。 売り込む前に、思い出してもらえる存在になること。

毎回、自社サイトへ誘導する投稿は、ユーザーから見ると売り込みに見えやすい。 一方で、投稿内で価値が完結している投稿は、「この人は役に立つ」「この会社は信頼できる」という印象を残します。

Amanda Natividad と Rand Fishkin が言語化してきたゼロクリックマーケティングは、検索流入が減る時代、SNSが外部リンクを歓迎しない時代、AIが答えを要約する時代において、マーケターが適応するための考え方です。

これからのマーケティングでは、

まず価値を渡す。 信頼を積み上げる。 その信頼を土台にして、たまに誘導する。

この順番が重要になります。

ゼロクリックマーケティングの本質は、クリックを諦めることではありません。 クリックされる前に、選ばれる理由を作ることです。

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